今回はこれまでとは雰囲気の違う地下鉄鶴舞線「大須観音」駅周辺のエリアを調査しました。
実はポテンシャルが高い「大須観音」エリア
「大須観音駅」周辺は、これまでdelaDESIGNでご紹介してきた2エリア(川名・高岳)と異なり、いわゆる「人気学区と呼ばれるエリアではない」地域です。
しかしながら、位置している地理的な要素やその環境を考えるとポテンシャルが高いと言えます。
多様性を感じられる数少ない場所
大須観音は色々な意味での多様性が感じられる場所です。分かりやすい例としては、
- 日本の伝統文化を感じられる
- 多種多様な外国文化を感じられる
- 様々なカルチャーを感じられる
といったものがあります。
もちろん、この環境で生活したり、子育てをしたりする、という事に対してどう感じるかは人それぞれ異なり、このポイントをどう評価するかは難しいでしょう。
しかし、近年は様々な価値観に触れる機会が増え、それに対する理解が求められる時代になってきているのは間違いありません。
そして、名古屋市内でこの「多様性」を日常的に感じられる場所は少なく、その数少ない希少な場所の1つが大須観音です。
日本の伝統文化を感じられる
これは最も分かりやすいことですが、大須はシンボル的な寺院である「大須観音」、織田信秀(信長の父)が建立し大須一帯の地主でもある「万松寺」など、神社仏閣が多い場所です。
神社仏閣があるだけでなく、毎月28日には大光院(赤門明王殿)で「みょうおんさん縁日」・赤門通りで「赤門28祭り」などが行われていたり、大晦日には万松寺が除夜の鐘をつく催しが開催されています。
また、大須大道町人祭では「おいらん道中」が行われているなど、数多くの伝統文化を感じられるイベントが日常的に行われているのです。
地元の小学校もこういった伝統文化を大切にしているようで、大須小学校ではクラブ活動として「大須太鼓クラブ」や「大正琴クラブ」が存在しています。(少なくとも2021年6月の大須小の学校だよりにはクラブ活動として掲載されている)
つまり、大須はこういった伝統文化を日常生活のなかで感じられる希少な環境であると言えるでしょう。
実際に28日に現地に行ってみたところ、規模は小さいながらも一部道路が歩行者専用になっており、複数の屋台も出ていて賑わっていました。
多種多様な海外の文化を感じられる
大須の街は、名古屋市内でも外国の方々を多く見かけるエリア。
実際に商店街を歩いてみると観光として訪れる人に加えて、様々な国の文化に触れられる珍しいお店が数多くあります。
日本で生活しているとこういった海外の文化に触れる機会は少なく、大人でもなかなかこうした知識・理解は身につきにくいかもしれません。しかし、近所の環境としてこういった文化に触れられるものがあると、調べたり理解したりする良いきっかけになると思います。
例を出すと、下の画像は大須商店街にあるHalal(ハラール)ショップ「カセリヤ 大須店」さん。
「”Halal(ハラール)”って何?」
というような疑問を日常的に感じ、調べることで、その文化や価値観の理解につながる、というイメージです。
上記以外にもアジアンフードストアがあったり、ブラジル料理のレストラン、ベトナム料理のレストランなど、海外の文化に興味を持つきっかけになり得るものが多数あります。
様々なカルチャーを感じられる
大須は「名古屋の文化発信地」と言われることもあるぐらい様々なカルチャーが入り乱れており、
- 電気・電子機器
- 古着ショップ
- 食文化(レストラン・カフェ・食べ歩き)
- サブカルチャー(アニメ・ゲーム・アイドル等)
などのお店・イベントが多くあります。
全国的に有名なところだと、世界コスプレサミットのイベントである「大須コスプレパレード」が開催されており、1,000人以上のコスプレイヤーが商店街を練り歩いていたりします。
大須商店街自体もこのイベントを後押ししており、全店舗ではないものの普段はマナー違反として禁止されている「仮装をしての入店」をイベント期間中はOKになります。
このことからも、大須という街は、様々なカルチャーに寛容であり、様々な価値観を受け入れられる街である、ということが分かりますね。
近年分譲が進んでいる大須エリアの新築マンションの建設予定地周辺は、以下のような様子になっています。
少し分かりづらいですが、奥に見えるタワークレーンがマンションの建設予定地。
手前の街並みは様々なサブカルチャー関連の店舗になっています。
かなり極端な例ではありますが「大須に住む」ということは、こういう雰囲気のなかで様々な価値観を日々感じ受け入れながら暮らしていくということです。
(ちょっと脇道に逸れますが)ちなみに、実はこのマンションは大手デベロッパーが開発している大規模マンションで、値段も中身も高級路線。
つまり、大手デベロッパーもこの街の価値を評価しているということですね。
繰り返しにはなりますが、こういった多様性をどう考え、どう評価するかは人それぞれ。
ただ、上に挙げたような多様性を感じながら生活できるのは名古屋市ではこのエリア以外にありません。
学区について
ここからは「子育て・教育」に関する大須観音の環境についてご紹介します。(いつものやつです)
学区の位置関係
大須観音駅周辺に住む場合、前津中学区となり、小学校は大須小か栄小のどちらかに通うことになります。
この学区も他の学区と同様、一部のエリアは住所(町)だけではどの学校に通うことになるか判別できないため、事前に確認する必要があります。(記事最下部参照)
上図の通り、栄小・大須小それぞれと前津中が離れており、特に大須観音駅周辺に住んだ場合は中学校の通学に少し時間かかりそうです。
(大須観音駅→前津中は989m/徒歩約14分)
各学校の公式ホームページは以下の通りで、そこまで凝った作りにはなっていませんが、学年通信等はしっかりと更新されています。
特に大須小・前津中は「学校評価」が公開されている珍しい学校です。
学校評価は生徒と保護者に対するアンケート結果で、これにより「児童の考え方や保護者が学校をどう評価しているか」という分かります。これは学区選びの際には非常に参考になるのではないでしょうか。
大須小ホームページ→こちら
栄小ホームページ→こちら
前津中ホームページ→こちら
各学校の基本データ
各学校の小学校、中学校の基本的な統計データをご紹介します。
都市部寄りの学校ということで、どの学校も小規模校になっています。
小学校の生徒数・学級数
生徒数/学級数
出典:2021年名古屋市教育調査統計より作成
名古屋市では、小学校は12から24学級が望ましい規模、としており、今回対象となっている小学校は両校ともに名古屋市としては「小規模校」という扱いになっています。
もちろん、小規模校は先生との距離感が近く、きめ細やかなケアが期待できるといったメリットはあります。
しかし、特に大須小は生徒が減少傾向が続いている事もあり、将来的な学校統合の可能性が0ではない事は頭に入れておいたほうが良いかもしれません。
私立中進学率
前津中学区の私立中学の進学率は2020年-2021年データで10.7%です。
これは名古屋市全体の平均値が約10%であることを考えると極端に高くも低くもない平均的な環境であると言えます。
中学校
生徒数/学級数
前津中の生徒数、学級数は以下の通りです。
出典:2021年名古屋市教育調査統計より作成
こちらも小学校と同様に生徒数、学級数ともに多くはありません。
ただ、こちらは名古屋市が「望ましい規模」としている6学級から24学級の範囲にギリギリ入っているため、名古屋市としては小規模校という扱いにはしていません。
今後の教育環境の展望
下町情緒溢れる町として発展してきた大須観音周辺。
その魅力の高さから類いまれな集客力があり、近年は商店街の家賃も高騰しているそうで、少しずつ事情が変化しつつあるようです。
特に顕著なのが都市部を中心とした「職住近接」ブーム。
職場の近くに住居を構えるという考え方で、これまで商業ビルが中心であった利便性の高いエリアにも続々と新築タワーマンションや高級マンションが分譲されるようになりました。
名古屋市でも伏見駅の2017年分譲の「プラウドタワー名古屋栄」を皮切りに、名駅や栄エリア、伏見〜東別院といた商業地に続々と新築マンションが分譲されています。
大須観音駅周辺にも、積水ハウスの最上位ブランドを冠した「グランドメゾン大須門前町通」(2022年5月)が分譲済、「グランドメゾン大須ザ・タワー(2023年1月竣工予定)」が販売中。
分譲される住戸についても、これまでは商業地といえば単身者向け住戸が中心でしたが、近年は2〜3LDKといったファミリータイプもあります。
タワーマンションは分譲価格も高いため、入居する層の平均所得を鑑みても、今後このエリアの教育環境が大きく変化する可能性は高いと思われます。
東京の例になりますが、タワーマンションが数多く分譲されている豊洲エリアでも教育環境が大きく変化している模様。
有名中学受験塾SAPIX豊洲校が規模を拡大。2020年度に目覚ましい成果を挙げたことが話題になりました。
今後、このような流れが名古屋の商業エリアにもやってくるかもしれませんね。
通勤・通学について
交通の便は悪くない
「大須観音」駅は地下鉄鶴舞線沿線の駅。
以下の地下鉄路線図を見るとわかるように、鶴舞線はビジネスの拠点や繁華街である名古屋駅・栄駅に行くには乗り換えが必要です。
画像引用元:名古屋市交通局ホームページより
これだけを見ると、交通の便が良くないように見えますが、実はそうではないのです。
大須観音周辺は地下鉄以外も交通インフラが整備されており、
- 地理的には名駅・栄に近い
- 特に栄エリアは近く、矢場町周辺は栄まで徒歩で行ける
- シェアサイクルを活用すれば名駅も近い
- 名駅・栄方面のバス便がある
という環境にあります。
ここまで揃っていると、むしろ利便性の高いエリアであることがわかるでしょう。
徒歩・自転車移動
以下の図は、「名古屋」駅や「栄」駅といった主要駅までの徒歩・自転車による移動時間を示したものです。
(※移動時間はNAVITIME検索より)
実は「矢場町」駅までは徒歩で20分かからない位置関係。自転車があれば名駅まで12分です。
ここで、
「いやいや、自転車は停める場所がないし、利便性高くないでしょ」
と思う方も多いかと思いますが、近年名古屋エリアはシェアサイクルが非常に充実してきており、自転車移動の利便性が高まっています。
試しに規模が大きい2つのサービス(カリテコバイク/チャリチャリ)だけの乗り降り可能な場所(ポート)のマップを作ってみました。
(※各ポートは22年9月時点のもの)
上図の通り、ポートの数は非常に多く、途中でマップ作成しようとしたのを後悔するレベルで整備されています。(もう二度とやりたくない)
もちろん、このサービスは自転車に乗った拠点(ポート)以外でも同じサービスのポートならば乗り捨てが可能で、通常は駐輪が厳しく規制されている名駅周辺なども気軽に自転車で訪問する事が可能です。
価格も以下の通り、そこまで高額ではないため気軽に利用でき、非常に良いサービスだと思います。
バス移動
大須観音駅から徒歩6分のところにあるバス停「大須本町通」があり、ここから栄、伏見、名駅に行くことができます。
このバスは「都心ループバス」と言われる都心主要部を巡る特別な系統。昼間は平日も土日も10分間隔で運行おり、非常に便利なバス系統です。
画像出典:名古屋市交通局「都心ループバスC-758系統沿線マップ」より
バスは道路状況等の影響を受けやすいデメリットはありますが、栄、伏見、名駅に乗換なしでアクセスできるのは交通利便性の非常に良い環境と言えるのではないでしょうか。
周辺環境について
ここからは学校以外の子育てに関する環境をご紹介していきます。
公園や遊び場:意外にも充実
都心に近いので少ないかと思いきや、駅から半径1km以内に遊具のある公園が7つありました。
久屋大通公園や白川公園といった大規模公園もあり、比較的公園は充実しているのではないでしょうか。
各公園の画像は、記事最下部にまとめてありますのでご興味があれば是非チェックしてみてくださいね。
保育環境:駅の東側に幼稚園が4園
幼稚園は駅の東側に以下の4園があります。
ちょっと場所の偏りがあるような気がしますが、お東幼稚園、大須幼稚園、西別院幼稚園では園バスがあるようなので、登園に苦労するような事はなさそうです。
中区のこども園は金山方面(大須観音の南)に「認定こども園正木幼児園」があるのですが、園バスがないようなので、少し通園するのが大変かもしれません。
また、保育園については名古屋市の公式ホームページで一覧が確認できるのでこちらからチェックしてみてくださいね。
学習環境:習い事の選択肢が豊富
公文式
早期教育でよく名前が挙がる公文式ですが、以下のマップの通り、1km圏内に4教室、そこから少し離れた場所に4教室あります。
これまで紹介してきた地区が充実していたので少なく感じますが、これぐらいの数の教室があれば通うのには困らないと思います。
中学受験塾
中学受験塾の状況は以下の通りとなっており、基本的には「名古屋」駅の校舎に通うことになります。
前述の通り、名古屋駅までの交通手段はいくつか用意されているのですが、その中にあるバスは20時台までしか運行していません。
そうなると名駅→伏見間を電車、その後1駅分は乗換して鶴舞線を使うか、徒歩、という事になりそうです。
高校受験塾
高校受験塾は中学受験よりも選択肢が少し多く、名駅の河合塾・名進研に通うか、隣の上前津駅周辺にいくつか塾があるので、ここに通う事になりそうです。
なお、冒頭で「人気学区ではない」という事を書きましたが、高校受験に際してはこの事はプラスに働くかもしれません。
というのも、教育意識が高すぎる学区(=人気学区)は内申点で高得点を取るのが大変なのです。それに比べれば、そこまで厳しい争いではない可能性が高いからです。
(もちろん、どんな環境でも上位をキープするのは簡単じゃあないんですが…)
近年、入試改革で公立高校入試の内申点比率は下がる傾向にはありますが、それでも30%程度は内申点。
そう考えると、少しでも厳しい争いではない方が有利だと思います。
その他習い事
数々のフィギュアスケートの有名選手を生み出した教室が名古屋にあるのはご存知でしょうか?
伊藤みどりさん、安藤美姫さん、浅田真央さんなどの世界的なフィギュアスケート選手は大須にある「名古屋スポーツセンター」でフィギュアスケートを学んでいました。
大須に住んで自分の子どもをこの教室に入れて…なんていう事を考えるのも楽しいかもしれませんね。
また、この教室は、夏休み・春休みの早朝に数日間の短期教室を開いています。
周辺に住んでいないと通常クラス(平日)に通うのは厳しいかもしれませんが、夏休みの5日間だけなら頑張れば通えるかも?
価格も、基礎クラスということもあり、今年(2022年)の夏休み短期教室は5日間で6,600円(貸靴代込)というリーズナブルな値段設定でした。
「この場所からあの選手たちが…!」と考えながら子ども達がレッスンを受ける姿を見るのは楽しいと思います。
そのほか、都心部は子ども向けの習い事が少ないイメージがありますが、そんな事はなく、少し調べただけでも
といった、子ども向けのレッスンを備えたスクールが数多く確認できました。
(個人教室が多いのでマップには載せていませんがピアノ教室もいくつかありました)
キッズドラム教室があったりするのも、大須らしくて良いですね。
上記の通り、一般的な習い事は揃っており、この面でも困る事はなさそうです。
生活必需施設:生活環境は非常に充実している
以前までの記事と同様、生活に必要な施設を調査しましたが、川名や高岳と比較しても遜色ないレベルの充実度でした。
さらに言えば、大須商店街の中には大手(チェーン)ではない様々な店舗が数多くあり、日常生活の利便性では名古屋市内でも随一の場所であると言っても過言ではありません。
スーパー・コンビニ
いつも通り、スーパーとコンビニマップを作ってみました。
上図の通り、コンビニの数は大須観音駅1km圏内に50店舗以上!数としても申し分ないですし、スーパーも1km圏内に4店舗あります。
スーパーの種類も北部の成城石井といった高級ラインから、マックスバリュといったお値打ち路線のスーパーまで揃っており、困ることは無いと思います。
ドラッグストア
ドラッグストアの状況もマップにしてみました。
ドラッグストアも大須観音駅1km圏内に8店舗、2kmまで広げると20店舗以上あり充実しています。
もちろん、都市型のコンパクトな店舗が多いのですが、そうではない大規模店舗もあります。
例えば、大須観音駅南東にあるVドラッグ大須店は非常にきれいな大型店。
通常のドラッグストアの商品はもちろん、お弁当や野菜、さらには精肉まで販売されており、ほぼスーパーと言っても過言ではないレベルの充実度でした。
病院(小児科)
小児科の状況は以下の通り。
駅から半径1km以内には10か所、半径2kmまで広げると35以上の病院があります。
上記はあくまでも「小児科」が診療科目に入っている病院のみをプロットしており、それ以外の病院まで入れるともっと多くの病院があります。
まとめ
以上、大須観音駅周辺の状況とその魅力についてご紹介してきましたが、まとめますと、
- 立地や交通の充実度を考えるとポテンシャルが高い
- 多様性を感じられる名古屋市内でも希少なエリア
- 生活に必要な施設・商店は揃っていて利便性が高い
- 子育て環境としても一般的に欲しいものはある程度揃っている
という感じです!
名古屋に住んでいると都心部周辺に住む、というイメージがあまりないですが、生活環境としては充実していました。
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参考/各公園の様子
裏門前公園
白川公園
仲ノ町公園
六反公園
西大須公園
松原公園
参考/町名と学区のリスト
2021年5月時点における町名と学区の関係については以下の通りです。
(名古屋市ホームページ:「市立小・中学校の通学区域一覧」より)
大須小学区
大須一丁目(※1)/大須二丁目(※1)大須三丁目(※1)/大須四丁目(※1)/栄五丁目(※2)/松原一丁目(※3)
※1:大須小、栄小学区が混在
※2:栄小、大須小、新栄小、老松小学区が混在
※3:松原小、大須小学区が混在
栄小学区
大須一丁目(※1)/大須二丁目(※1)大須三丁目(※1)/大須四丁目(※1)/栄一丁目/栄二丁目/栄三丁目/栄四丁目(※4)/栄五丁目(※2)/錦一丁目(※5)/錦二丁目(※5)/錦三丁目(※6)
※1:大須小、栄小学区が混在
※2:栄小、大須小、新栄小、老松小学区が混在
※4:栄小、新栄小、老松小、東桜小学区が混在
※5:栄小、御園小学区が混在(御園小と名城小は統合し丸の内小となる予定)
※6:栄小、名城小、御園小学区が混在(御園小と名城小は統合し丸の内小となる予定)