2024年初の駅エリア特集は、地下鉄東山線と地下鉄鶴舞線の2路線が利用可能な【中区伏見】を特集します。
地下鉄東山線/鶴舞線「伏見」駅
「伏見」駅は市内一番人気の地下鉄東山線と、日進市・豊田市方面や江南市・犬山市方面へもアクセスの良い地下鉄鶴舞線の2路線が利用可能な乗り換え駅。
オフィスビルが林立する名古屋を代表するビジネス街です。
名古屋城のほぼ真南の位置にあり、碁盤の目状に整備されたすっきりとした街並みが特徴。
戦後は東西を横断する「錦通」「広小路通」と名古屋城から熱田神宮までを縦断する「伏見通」の3本の幹線道路が整備されました。
オフィスビル街の印象が強い「伏見」駅は、名駅・栄・丸の内・大須の4エリアの中心にあり、商業地・文化発信・再開発など様々な表情を見せる街。
また、近年はタワーマンションが続々分譲され、「住む街」としても再注目されています。
地価上昇率もめざましく、2016〜2020年にかけては、なんと毎年10%以上も高騰。年始に企画した「名古屋市内の駅・地価上昇率ランキング’23」でも3位にランクインしました。
住所としては広小路通と伏見通が交差する「広小路伏見」交差点を起点として、北西側:錦1丁目、北東側:錦2丁目、南西側:栄1丁目、南東側:栄2丁目となっています。
伏見4エリア徹底解説
「伏見」駅は栄・名駅・大須・丸の内の4エリアの中央に位置しており、エリアごとにランドマークとなる施設が点在しています。
今回は、4エリアに分けて代表となるスポットを解説します。
【東】栄エリア:オフィスビル街〜繁華街
「伏見」駅の東側に広がるのは栄方面に続く繁華街。
「栄」駅に近づくにつれ商業地の側面が強くなりますが、旧東海銀行本店(現在の三菱東京UFJ銀行名古屋中央支店)や瀧定名古屋ビルなど、名古屋を代表する企業が本社ビルを構えるエリアでもあります。
伏見エリアは、都市の国際競争力を強化する「特定都市再生緊急整備地域」に指定されています。
また、本町通〜大津通までの「錦・丸の内エリア」と「栄三丁目」エリアは、リニア中央新幹線の開業に向けて名古屋市が計画するまちづくり基本方針「栄地区グランドビジョン」の該当エリアとなっています。
このエリアの特徴として挙げられているのが以下の4つ
・城下町の歴史を引き継ぐ界隈
・昼も夜も賑わう界隈
・イベント盛んな界隈
・歴史と文化を感じる界隈
栄まるごと感動空間を基本コンセプトとして、道路のにぎわいの演出(広小路通・錦通・大津通)、地下空間の魅力向上、災害に備えた公開空地などの環境整備が強化される予定です。
これにより、老朽化したビルの更新についても民間との共同開発が検討されています。
【南】大須エリア:芸能と文化のまち
「伏見」駅の南側には、公園や美術館など、文化や芸術、歴史に関する施設が集まっています。
白川公園
駅周辺のオフィス街と大須商店街エリアの中間にある公園。これより北がオフィスビル街、南側は歴史ある大須商店街につながるエリアとなっています。
公園内には広いグラウンドと「名古屋市科学館」「名古屋市美術館」が併設されています。
名古屋市科学館
世界最大のプラネタリウムや人工竜巻など、さまざまな科学体験ができる施設。14フロアの展示室では、実際に触れて体験出来る展示や実験・実演ショー充実しています。
プラネタリウムを中心とした「天文館」、物理や原理などを紹介する「理工館」、生命や環境問題を紹介する「生命館」で構成され、子供だけでなく科学マニアの大人も楽しめる展示内容となっています。
名古屋市美術館
白川公園内にある美術館。名古屋市出身の著名な建築家・黒川紀章氏の代表作となる名建築です。名古屋城・大須観音・熱田神宮といった名古屋を代表する伝統的建築物の意匠が随所に取り入れられています。
御園座
歌舞伎の公演劇場として知られる「御園座」の母体となる名古屋劇場株式会社は、1896年(明治28年)に設立されました。
空襲で全焼するなどの苦難を乗り越え、100年以上に渡って愛されてきた老舗の劇場ですが、2011年、長引く不況により存続の危機に立たされます。
その後、土地・建物が積水ハウスに売却され、2018年に劇場・商業施設・分譲マンションで構成される『グランドメゾン御園座タワー』が竣工しました。
劇場部分の外装には旧御園座の「なまこ壁」がデザインされており、「新国立競技場」の設計に携わった著名な建築家・隈研吾氏が監修しています。
【西】名駅エリア:納屋橋周辺の再開発
「伏見」駅の西側にある「納屋橋」はメインストリートである広小路通の堀川にかかる橋。
この周辺一帯は、再開発によって近年大きく印象が変わりつつあるエリアです。
このエリアの再開発事業は、リニア中央新幹線開業に向けて、名駅〜伏見〜栄の3エリアに新たな賑わいを創出することを目的としたまちづくり構想の一環としてスタートしました。
中でも大きく注目されたのが、約0.72haの地区に店舗・住宅・事務所・生活支援施設・駐車場などが一体となって建設された「納屋橋西区市街地再開発事業」のビッグプロジェクトテラッセ納屋橋。
店舗とオフィスを備えたゾーンには『MEGAドン・キホーテUNY納屋橋店』やドラッグストア、スポーツジムなどが入居しており、この地域だけで生活が完結する仕様。レジデンス部分として分譲された『プラウドタワー名古屋栄』は、伏見エリアのタワーマンション人気の火付け役とも言える存在で、現在も高い取引価格を維持する人気物件となっています。
明治〜大正にかけての堀川は、名古屋港へ続く水路として活用され、周辺も大変賑わっていました。そんななか、大正2年に近代的な西洋風の橋へと改築された納屋橋は人気スポットに。老朽化のため昭和56年に改築された際も、大正時代の趣を残すデザインが取り入れられています。
現在の納屋橋南地区では、堀川沿いの水辺空間を活かし、民間事業者からアイデアを公募して市の土地を活用しています。第一期ではウェディングレストランが、第二期では『COLORS.366』として飲食とエンタメが展開されています。
「堀川フラワーフェステバル」や「夜イチ」などイベントも多く開催されています。
また、「伏見」駅の西側には「名古屋観光ホテル」「ヒルトンホテル名古屋」「リッチモンドホテル名古屋納屋橋」など、代表的なホテルが集まるエリアでもあります。
【北】丸の内エリア:伏見エリアの発展を支えた「長者町繊維街」の歴史
名古屋城南部に官庁街が広がっていることもあり、「伏見」駅の北部はオフィスビルを中心としたエリア。隣駅の「丸の内」駅前には『日本銀行 名古屋市店』があります。
一方、あいちトリエンナーレの会場となったり、ミニシアターとして根強い人気のある『伏見ミリオン座』など、文化発信エリアとしても注目されています。
なかでも「長者町繊維街」は、歴史的にも伏見エリアの発展を支える重要な存在。その歴史を紐解いてみましょう。
江戸〜明治〜大正:歓楽街として発展
名古屋城下のメインストリートは「本町通」。裏通りに当たる「長者町」は、比較的裕福な武士が居を構える町屋街でした。
現在も残る老舗料亭『河文』をはじめとした料理屋が多数ひしめき、江戸時代後期には芸者が多く集まる繁華街として発展します。1873年(明治6年)には「長者町盛栄連」が結成されました。大正時代には置屋が34軒もあり、人力車の詰所が5箇所もあったと伝えられています。
昭和:繊維問屋街として発展
江戸時代から続く瀧定株式会社や豊島株式会社など、現在も老舗の繊維商社が残る長者町周辺。
大正末期から昭和にかけては、繊維問屋街として大きく飛躍を遂げました。「現金取引」や「薄利多売」といった当時としては画期的な商法を展開し、日本有数の問屋街に成長。戦後の国内産業の発展に大いに貢献しました。
平成〜令和:アートと文化発信のまち
平成に入ると、国内繊維産業の衰退やバブル崩壊後の不況、少子高齢化など複合的な要因によって、繊維問屋の廃業が相次ぎます。商店街には空き店舗が目立つようになり、街は活気を失っていきました。
しかし、2000年ごろから開始されたまちづくり活動が功を奏し、2010年開催の第一回あいちトリエンナーレの会場に選出。空きビルや空き店舗を活用した空間演出が人気を呼び、大成功を納めました。
アートの街として注目され始めると、空き店舗が徐々に埋まり始め、閑散としていた「伏見地下街」には立ち飲みの飲食店が次々と入居。現在はディープな立ち飲みスポットとして再興しています。
編集部イチ押し!ライフインフォメーション
生活利便施設(買い物施設・公共施設)
伏見駅ナカ商業施設『ヨリマチFUSHIMI』
2019年に「伏見」駅の南側コンコース(改札外)にオープンした地下商業施設。名古屋市交通局と名鉄都市開発が協力して開発しています。
「ちょっとよりミチ、ちょっとよりマチ」がコンセプト。「伏見」駅周辺にはオフィスビルが多いことから、通勤途中や帰宅途中に立ち寄りやすいコンビニエンスストア、ドラッグストア、ベーカリー、スターバックス、マッサージ店などが出店しています。
テラッセ納屋橋内の商業施設
堀川沿いの納屋橋再開発エリアにある複合商業施設。『プラウドタワー名古屋栄』に併設されており、スーパーやドラッグストア、フードコート、スポーツジムなどが入っています。
それまでオフィスビル中心だった伏見エリアに生鮮食品をを扱うスーパーが出店したことで、「住む町」としても注目されるようになりました。
施設概要
住所:名古屋市中区栄1丁目2番49号
TEL:0570-094-611
営業時間:ドン・キホーテ 10:00~24:00
専門店 10:00~22:00
伏見周辺ランドマークビル5選!
今回は、4エリアに分けて伏見駅周辺の特徴をお伝えしてきました。
オフィスビル街として歴史の長い伏見エリア。近年は住む町としても注目されており、タワーマンションも増えています。
街ブラ取材の中で、私が「かっこいい!」と惚れ込んだランドーマークビルを5つご紹介します!
①三菱東京UFJ銀行名古屋市店(旧東海銀行)
旧東海銀行本店の跡地に2021年11月に竣工したビル。
地上10階建で高さは約60メートルあり、旧ビルの約2倍ほど。内装や外壁には地元産の木材などが使用されており、第30回愛知まちなみ建築賞/2022を受賞しています。
従来の銀行窓口機能は2階に配置され、1階には日本や世界各国の珍しい貨幣が体系的に展示された『貨幣・浮世絵ミュージアム』などの店舗が入居。
オフィス部分にはフリーアドレス制や2層吹き抜けのリフレッシュスペースなどが採用されています。
②NTTデータ伏見ビル
1976年に竣工した、名古屋における初期の代表的な超高層ビルの1つ。
広小路通・伏見通・錦通といった名古屋を代表する主要幹線道路の角地にあり、[X印]が並んだ印象的な外観が大きな特徴です。
築50年近いビルながら、ランドマークビルとしての存在感は健在。
③名古屋インターシティ
錦通と伏見通りの交差点、『NTTデータ伏見ビル』の斜向かいにある「伏見」駅直結のオフィスビルで、2008年の竣工。
品川・赤坂に続く都市型大規模オフィスブランド「インターシティシリーズ」の3番目のビルで、一面ガラス貼りの近代的な外観が印象的です。
④グランドメゾン御園座タワー
経営難にあった「御園座」の立て替えプロジェクトとして誕生した劇場・商業・住居の複合ビル。
積水ハウスが分譲したレジデンス部分は総戸数304戸の大規模タワーマンション。
現在の伏見エリアがタワーマンションの建設地として大きく注目されるきっかけとなった存在でもあります。
販売当時は、選ばれた顧客にのみ案内されるシークレット販売のスタイルが取られました。その後、オープンされないまま全戸が完売。現在も高い取引価格を維持しています。
「伏見」駅の駅前にありますが、現在は直結のルートはありません。「伏見」駅から「御園座」側への出入口となる地上エレベーター設置工事が始まっており、令和8年運用開始の予定です。
⑤『テラッセ納屋橋』と『プラウドタワー名古屋栄』
『テラッセ納屋橋』は、オフィス・商業施設・住宅の複合ビルで、『プラウドタワー名古屋栄』は住宅部分として分譲されたマンション。
住所は栄となりますが、エリアとしては伏見と名駅の中間地点にあたります。
29階建、高さは98.95mと存在感もたっぷりです。
『プラウドタワー名古屋栄』は総戸数347戸のビッグプロジェクトでしたが、販売開始から半年余りで完売する人気ぶり。首都圏に続く「住宅の都心回帰」の傾向を印象付けました。
編集後記
デラデザイン創刊以降、ファミリー層に人気の住宅地の駅を中心にご紹介てきましたが、今回は満を辞しての都心エリアの特集となりました。
これまでも【東区高岳】や【千種区今池】といった商業エリアはご紹介してきましたが、【中区伏見】のポテンシャルはすごかった。
細切れでしか時間が取れなかったため合計6回ほど足を運ぶたびに、さまざまな表情を見せる街であることがわかりました。
現在も「伏見」駅周辺ではいくつかのタワーマンションが分譲中&計画中。
オフィスビルとタワーマンションが混在する特異なエリアとして、今後とも注目していきたいと思います。
お知らせ
来月以降のデラデザインは、諸事情ありまして私が担当する街歩き取材によるエリア特集が大幅縮小することになりました…(泣)
というのも、現在のデラデザインチームにはすでに多数の読者を持つブログを運営されるハイレベルなライターが集結しています。わざわざ私がざっくりとしたエリア解説を書くまでもなく、各ライターさんの記事にマニアックな、変態レベルの、詳細なエリア情報が十分すぎるほど充実しているのです!
そこで、今後私は大手ポータルサイトなどでも執筆させていただいているような不動産コラムを執筆させていただく所存です。
というわけで、次回以降非常にサラッとした内容のエリア紹介になってしまいますが、今後とも何卒よろしくお願いします!