隼河ジョンです。今回の「”ナゴヤ経済圏”企業探訪記」はカゴメです!
トマトケチャップや野菜ジュースで皆さんもよくご存知かと思いますが、実際はどんな企業なのでしょうか?
カゴメ株式会社とは
カゴメ株式会社とは1899年に創業者蟹江一太郎西洋野菜の栽培に着手、最初のトマトの発芽から始まった会社で、本社は、愛知県名古屋市中区錦三丁目14番15号です。
- 企業の名前
カゴメ株式会社(英語名:KAGOME CO., LTD.)
- 証券コード
2811
- 上場している証券取引所
東京証券取引所 プライム市場
名古屋証券取引所 プレミア市場
- 設立年次
1899年
- 本店所在地
名古屋市中区錦三丁目14番15号
- 資本金
19,985百万円(199億8,500万円)
- 業務内容
国内外での食品の製造、仕入及び販売など
※以上の情報は第81期半期報告書をもとに書いております。
ではこの「カゴメ」はどのような会社なのか、早速見ていきましょう!
カゴメのすごいところ!
国内シェア五十パーセント以上が三品目?!
画像のような商品を、皆さんもス-パーなどで見かけたことがあるでしょうか。みなれたこちらの製品たちは、すべてカゴメが製造しています。そもそもカゴメは、日本で初めてトマトケチャップを販売した企業。加えて、健康需要の高まりに際し、一日分の野菜の栄養素が取れるというコンセプトのジュースなどを販売。今でも盤石なシェアを築いているのです。しかし、それだけではありません……何とこの会社、世界全体で加工能力が三位なのです!
海外比率五割!脅威の食品メーカー!
まず、「カゴメ株式会社 統合報告書2025」を見てみると、このような画像が目に入ります。
なんと、国際事業の売上収益構成比が48.7%だというのです!八年でなんでこんなに伸びたんだ……。そして生トマトの加工能力は世界三位!錚々たる数字です。この数字の急伸の理由を見ていきましょう。そうして調べてみると、ある会社が関係していたことがわかります。それは2024年1月に連結子会社となった、米国カリフォルニア州のIngomar Packing Company, LLCという会社。Ingomarは全米二位、世界第四位のトマト加工能力を持っている会社を買収したことで、国際事業が大きく伸びたのですね!
ちなみに調べてみると米国カリフォルニア州において、1983年の設立以降、約40年に渡り、世界最大の加工用トマト産地でトマト一次加工品を製造・販売を行っていることがわかりました。 同社は年間約155万トンの加工用トマトを加工し、その量は米国で第2位、世界全体においても第4位の規模を誇るそうです。
※2022年度実績 (出典:TOP 50 global processors in 2022 Tomato News、2023年5月9日)
またこれは独り言ですが、Ingomarがアメリカの企業であるため、記事作成時点で停止しているトランプ関税の影響自体は米国外生産よりは限定的でありそうですね。一方で、農薬、農業用機械、原料などの生産面、関税による経済への打撃からくる消費のさらなる低迷などを考えると手放しには喜べない状況であることに変わりはありません。カゴメのこれからの活躍を期待したいですね。
ファン株主を生み出す!ファンベースドマーケティングとは?
さて、再び統合報告書2025を見てみると、不思議なことに気が付きます。文章中ではよく、ただの株主ではなく、「ファン株主」という言葉が使われることが多いのです。これは一体どういうことなのか、ここで統合報告書のあるページと、カゴメの考え方についてみていきましょう。
まず、トップメッセージからファン株主、という単語が出てきますね。しかも重要なのが、「国内外の投資家の皆様」よりも先に仰られていることです。カゴメでは、このファン株主、という存在を大事にしていることが伝わります。では、ファン株主とはいったいどのようなものなのでしょうか。
実はカゴメ、株主の9割以上が個人投資家という大変珍しい企業です。
転機となったのは2000年。この年、企業理念のひとつに「開かれた企業」というスローガンを掲げたカゴメは、続く2001年には株主数が1万人以下だった時期から「株主10万人計画」という目標を挙げました。現在の株主は20万人ほど、ずいぶんと多くなりました。このファン株主は、なんとほかの消費者よりも10倍以上商品を買ってくれるというのです。もちろん、株主優待だけではこのような結果になりません。
これらの取り組みがわかるのが、実は私がいまこの記事と並列して並べている「カゴメ株式会社 統合報告書2025」やカゴメの公式サイトからわかります。
通常、統合報告書や有価証券報告書は、個人とはいえ専門家が読むためのものなので、味気ないものが多いです。しかし……カゴメの統合報告書を見てみると

わかりやすい!!なんだこれは今回の記事楽になったわ
一般の方でもどのように見ればいいのかわかりやすい報告書になっているんですね。
また、カゴメのファン株主のページには(https://www.kagome.co.jp/company/ir/fan/)イベントとして畑での収穫体験や、決算報告会、社長と話すことができる(!)イベントなどが開かれていることがわかります。このようにファン株主を大事にし、ファン株主は会社を愛し、商品を買うという関係が出来上がっているのがカゴメなのです。
このような、会社と顧客のコミュニケーションが近年重視されるようになっています。その理由は、ロイヤルカスタマーづくりのためです。より今風に言うならばファンベースマーケティングです。 ファンをベースに、ファンと一緒に活動し、中長期的にマーケティング施策の精度を高め、事業価値を高める活動です。 既存顧客である「ファン」に焦点を当て、信頼関係を深めながらブランド価値を向上させていきます。ほかの企業の例を挙げるなら本店が三重にあれば真っ先に取り上げたであろう、イオンです。
ご存じの方もいるとは思いますが、イオンモールなどでは株主だけが使えるプレミアムラウンジや、株主専用のカードなどがあり、消費税を含むお支払金額合計が還元の対象になるという素晴らしい制度を設けています。
これにより、実は二つのいい効果があります。
①そこのお店をよく使ってくれるようになる
カゴメもイオンもやはりこれが一番の目的ですね。お客さんを離れないようにするだけではなく、
意見を聞いたり、関係を深めたりすることでより商品やお店を使ってくれるという考え方です。
②株価の安定に役立つ!
今の場面で強烈に力を発揮するのが、こちらの機能。例えば、トランプ関税で無茶苦茶になった今週の株式市場の中でイオンの株価を見てみると……

そう、個人投資家が持ち続けてくれることに加え、新しく個人投資家が買うため、株価が維持されるのです。これら二つの理由から、ファン株主を持つカゴメの底力が覗えます。
将来的にどんな企業になるのか?
現在も国内、国外ともにシェアを獲得していますが、将来的にはどのようなことを構想しているのでしょうか?
そこで役に立つのが「中期経営計画書」や「統合報告書」「事業報告書」です。
中期経営計画書は、三から五年の経営方針をまとめたもので今の会社の状況と将来なりたい姿やあるべき姿との差を埋めるロードマップです。野球の有名人でいえば、大谷選手の将来設計シートですね。
一方、統合報告書や事業報告書は投資家やメディア向けに自分の立ち位置やロードマップを示すものになります。特徴として挙げられるのはわかりやすい資料であるということ。初心者が見てもわかりやすいようになっています。ただ、事業報告書は株主などに送ってみてもらうための資料になりうることもあるので、選任などのために取締役の情報なども細かく乗っているなど載っている情報が少し違っています。
さてここでは、公式サイトからカゴメのなりたい姿=ビジョンを少し見ていきましょう。
当社が重点的に取り組む社会課題とは「健康寿命の延伸」「農業振興・地方創生」「持続可能な地球環境」の三つです。私たちの強みである自然の恵みを活かした事業を通じて、これらの解決に貢献したいと考えています。
そして、この社会課題の解決にむけて全員が同じ方向に向かい、会社がひとつにまとまっていくために、国内において10年以上も続いている野菜不足の改善を目指して、長期ビジョン「トマトの会社から、野菜の会社に。」をかかげました。
当社は今、ありたい姿と長期ビジョンの達成にむけて活動しています。
お客さまの健康的な食生活をサポートするために、トマトをはじめとした様々な野菜のおいしさや栄養を、生鮮・冷凍・加工食品・飲料といった様々な形態でお届けします。また野菜の健康価値の研究や野菜摂取に関する行動変容を促すコンテンツの開発と情報発信を強化していきます。
農業振興・地方創生に貢献するために、農業が抱える課題に挑み、加工用トマトや生鮮野菜の品種・栽培技術の開発を強化します。また積極的に各地の農産物のおいしさや地域の魅力を広める商品の開発・販売に取り組み、地域農業、地域経済の活性化に貢献したいと考えています。
これらの自然の恵みを活かした事業は、地球環境が持続可能な状態であることが前提です。豊かな自然を将来に引き継ぎ、カゴメも持続的な成長を遂げていくために、環境への負担に配慮した事業活動を推進していきます。
このように、明確な社会使命を掲げている企業は個人的には好印象ですね。野菜は日本人全体で摂取する量が減っていってしまっているので、それらをきちんとビジョンで解決しようという姿勢が素晴らしいと思います。また、これを目標に、カゴメではさらに2025年目標を具体的な数値で掲げています。
第3次中期経営計画最終年度である2025年度の定量計画は、売上収益3,000億円、事業利益240億円、事業利益率 8.0%です。トマトペースト市況の上昇影響を受けた2024年度の業績を下回るものの、第3次中期経営計画の目標値である売上収益3,000億円、事業利益240億円を2年連続で達成する計画です。
とても分かりやすく、ファン株主に対する気配りなどがわかりますね。
企業分析をしてみよう
日本の市場の一位や世界の中でも主要なプレーヤーにいるカゴメ、お財布はどのような状態なのでしょうか。そこで必要になるのが「統合報告書」や「有価証券報告書」です!第一回で細かく説明したので、今回は簡単に見ていきます。
(B/Sやキャッシュフローの詳細な説明が見たい方は、ぜひ第一回目の【瀬戸市】医療分野で世界中の人々を笑顔に — ガイドワイヤーシェア世界No,1のナゴヤ企業「朝日インテック株式会社」をご紹介!をご覧ください)
有価証券報告書は主に様々な企業情報が記載された、いわば「株式会社の健康診断書」になるものです。これらから、今のカゴメの姿を見ていきましょう!ちなみにここではカゴメのグループまで含めた連結経営指標を用いていきます。
「貸借対照表(バランスシート)」を見る
まず、バランスシートを見ていきましょう。別名、貸借対照表(Balance Sheet: B/S)といい、会社がどれだけ財産を持っているかが分かります。項目は資産の部と負債の部に分かれています。
カゴメの純資産がいくらになるかというと、 1,391億1,200万円です。自己資本比率で言えば66.6%ということになりますね。一方で、グラフにしてみるとこのようなことがわかります。
これは、左側が棒グラフ、右側が折れ線グラフに対応しています。まず、棒グラフを見てみると、純資産はだんだんと伸びている一方で、総資産は急激に伸びていっていることがわかります。そして折れ線グラフを見てみると、自己資本比率が棒グラフの総資産が急激に伸びた2020年と2023年で急に落ちていることがわかりますね。
2020年は、20年のコロナ禍での資金調達逼迫に備えた借入で一時的に低下したことが2021年統合報告書で明言されていました。
では、23年の理由を見てみましょう。
これにより大幅に自己資本比率が低下したものと考えられます!ちなみに、この転換社債の使い道は設備投資だったので、今後に期待ですね!
「損益計算書」を見る
次は損益計算書を見ていきましょう。損益計算書(Income Statement)とは、会社がいくら稼いで、そのためにどうお金を使ったかを記述し、最終的にいくら儲かったのかを明らかにします。
そしてこちらがカゴメのものになります。
……と、しようと思ったのですが、今回の損益計算書はあまりにも長かったので、泣く泣く割愛することにします。
さて、では簡単に説明だけ……いろんなものを引いて残った利益をもとにある数値を出せます。それが、売上のうちの利益の比率の売上高営業利益率で、いくら稼げているかの割合が分かります。この数字は同業他社でみると高いか低いかどうかわかりやすいですね。今回は、トマト関連商品をだしている伊藤園とキッコーマンを挙げてみましょう。カゴメでは11%でした。伊藤園では5.5%(24年4月時点)。日本デルモンテの親会社であるキッコーマンは10.1%(24年3月時点)でした!こうしてみてみるとなかなか高いことがわかります。
「キャッシュフロー計算書」を見る
キャッシュフロー計算書は、現金の出入りについて記録したものになります。お店でいえば通帳のようなものです。このキャッシュフロー計算書には3つ種類があり、それぞれ営業、投資、財務という3つでお金の動きを見ることになります。
営業キャッシュフロー(Operating Activities):日常業務から得られる現金。例えば、レンタル料金の収入、在庫の購入による支出が含まれます。
投資キャッシュフロー(Investing Activities):設備投資や不動産購入、もしくはそれらの売却によるキャッシュの動き。例えば、新しいレジシステムや新規のビデオ購入、販促用ロボットの導入コストなどです。
財務キャッシュフロー(Financing Activities):借入金の返済、株主への配当、資本増資など。例えば、銀行からのローンを返済する際の出金などがあげられます。
のようになります。
例えばここからわかることを分析してみましょう!
今回のカゴメさんは24年度の分を見ていきましょう。
さて、まずは24年の有価証券報告書を用いて以上の三つのキャッシュフローで表を作成しました!期首残高は年度の始まり、期末残高は年度の終わりのお金の合計をそれぞれ示しています。

まずは期首36,010…単位は百万円ですので360億1000万円ほどになります。そして、営業CFは316億円9200万円。そこから投資CFと財務CFでそれぞれ463億2500万円のマイナス、5億7100万円のマイナスになってますね。これらの要因として、有価証券報告書を見てみると
● 営業キャッシュ・フローは316億円の純収入(前年度は46億円の純収入)となりました。利益が順調に推移したことに加えて、棚卸資産が71億円減少したことなどにより増加しました。
● 投資キャッシュ・フローは、463億円の純支出(前年度は60億円の純支出)となりました。Ingomarの持分追加取得に伴い360億円を支出したことが主な要因となります。
● 財務キャッシュ・フローは、5億円の純支出(前年度は156億円の純収入)となりました。自己株式の処分等により231億円収入があったものの、短期借入の減少156億円と配当の支払いなどがあったことなどによります。 2024年度の財務指標にて、自己資本比率は51.3%、信用格付はシングルAとなっています。自己資本比率は、 Ingomarの買収による借入により一時的に50%を下回りましたが、自己株式の売却による資金調達により50%に回復しました。これらにより引き続き財務基盤は安定していると考えています。資本効率はROEが15.7%となり、目標の9% の水準を達成しています。また株主還元は、記念配当の10円に加え普通配当6円の増配を行うことができました。 第3次中期経営計画期間中の株主還元方針である「総還元性向40%」を確実に果たしていきます。
※下線、太字は筆者の後付け
つまるところ、今期のカゴメでは、シェア爆上げ要員のIngomarの買収による投資キャッシュフローのマイナスと、短期借入を返したりしましたが、自己株式を売却してお金を集めて微減で済ませることができました。ということですね。
本当に簡単な分析ですので、投資判断を前提とするような企業分析を行うには、さらに様々な式などで導き出す必要があります。
次は本業以外での企業の取り組みを見てみましょう。
事業以外の取り組み
カゴメがスポンサーのテレ東番組!「種から植えるTV」
2022年4月3日からテレビ東京で放送されているバラエティ番組です。 農業の素人であるアンジャッシュ・児嶋一哉が、日本各地の農家の作業を手伝い、普段私たちが食べている野菜や果物がどのように植えられ、育てられているのか、その1から10までを学んでいくファームバラエティ番組。最終的には手伝った農家から作物の種をもらい、番組専用の畑「こじファーム」で本気の野菜作りにも挑戦する、という興味深い番組です!なんとなんとカゴメの一社提供番組!関東だけしか見れないかと思いきや……TVerやネットでテレ東などでも見れるとのことです!良ければ見てみてくださいませ。
共助による支援も
食品メーカーであるカゴメ。そのためか、企業として様々なところで支援を行っていることがわかります。こちらのページでは例えば能登半島や、パレスチナ、ウクライナなどへ食糧支援を行っていることがわかります。地元企業というくくり抜きでも、尊敬すべき企業行動ですね!
おわりに

さて!ここまでカゴメを見てきました。ファンを惹きつけるだけではなく、世界に打って出ているカゴメですが、事業以外にもテレビ番組やサッカーの大会など私たちの身近な所にもカゴメがあることがわかりますね!今回主に情報源とした統合報告書ですが、詳しくない方でもわかりやすく読めるものとなっていて素晴らしい内容でした。もしご興味があればぜひ読んでみてください!
長くなってしまいましたがここまでご覧いただきましてありがとうございます。
これからもこういったナゴヤ圏から世界を目指す企業、羽ばたく企業などを紹介していきますので、応援よろしくお願いいたします!