"ナゴヤ経済圏"企業探訪記

【北区名城公園】1万7,000人収容の国内最大級アリーナがいよいよ開業!『IGアリーナ』の「IG」とは?【番外編/前編】

隼河ジョンです。今回の「”ナゴヤ経済圏”企業探訪記」は番外編です!
今回は、趣向を変えてイギリスのある企業を取り上げていきます!

今回の題材は……?

さて、今回はこのメディアではほとんど外に出ていない私が外に出て撮影するところから始まります。

着いたのは名城公園駅。ここからはやくも見えてきました!

そう、愛知国際アリーナ、通称『IGアリーナ』です!

名古屋市中区二の丸に存在した愛知県体育館の後釜、増床新築移転した愛知県の国際競技対応の施設になります。この大きさは横浜アリーナや有明アリーナと同規模の国内最大級ということなので、新しい施設に期待が高まりますね!

……さて、ここまで書いてきて、勘のいい読者様はもうお気づきかと思います。今回の企業はIGアリーナのネーミングライツを獲得したIGグループです。皆さんはIGグループ、あるいはIG証券はご存じでしたか?今回はそんなイギリスの金融グループについて深堀していこうと思います!ちなみにネタ切れではなありません。悪しからず!

IGグループとは

IG証券は

IG証券について
FX、CFD、ノックアウトオプションのリーディングカンパニー

イギリスのロンドンに本拠地を構え50年以上の歴史を持つ金融サービスプロバイダー、IGグループの日本拠点。FXから個別株、株価指数、債券、商品など多様な資産クラスをワンストップで提供中

  • 企業の名前
    IG証券株式会社(英語表記:IG Securities Limited)
  • 証券コード
    なし(日本未上場)
  • 上場している証券取引所
    なし
  • 設立年次
    2002(平成14)年12月3日
  • 本店所在地
    〒106-6026 東京都港区六本木1-6-1泉ガーデンタワー26F
  • 資本金
    1億円
  • 業務内容
    1.インターネット上で行う外国為替/CFD/バイナリーオプション取引に関する業務
    2.外国為替/CFD/バイナリーオプションの売買業務
    3.外国為替/CFD/バイナリーオプション売買に関する情報提供サービス
※以上の情報はIG証券の公式情報をもとに書いております。

1.インターネット上で行う外国為替/CFD/バイナリーオプション取引に関する業務
2.外国為替/CFD/バイナリーオプションの売買業務
3.外国為替/CFD/バイナリーオプション売買に関する情報提供サービス

……うーん、難しいですね。CFDやバイナリーオプションとはどのようなものなのか、ご存じない方もいらっしゃるかもしれません。

なので今回は、皆さんがあまりなじみのないこういった概念含めて、前編後編二つに分けてお話ししようと思います!この企業がどのような事業をしているか。どんな国でどのような事業をしているかについてや、これらの簡単な業績を出し、後編ではより詳細な分析やちょっとしたサプライズも書いていきます。

どんな業務をしているの?

そもそもCFD取引とは?

最近、CMなどでCFD取引、といったワードを聞いたことがあるかもしれません。CFD(Contract for Difference)は、特定の資産(例:株式、株価指数、商品、為替など)の価格の変動を利用して利益を狙う金融商品です。日本語訳すると、「差金決済取引」といいます。訳が分からないという皆さん、私も同じです。それでいいのか証券マン。と、冗談はそれくらいにして解説していきます。

CFD取引の特徴としては実際の資産を所有せず、価格の差額だけをやり取りすることができます!

簡単な仕組みとして1例を考えてみましょう!

例えば、前回取り上げたカゴメ(2811)の株価が1株3,000円だとします。あなたは「値上がりする」と予想してCFDで「買い」のポジションを持ちます。後日、株価が3,300円になったら、差額の300円が利益になります。逆に値下がりしたら損失ですね!

ここでのポイントは三点です。

①レバレッジ
少額の資金で大きな取引が可能です(例:10万円で100万円分の取引)。しかし!リスクももちろん高くなることをお忘れなく……。
②売りから入れる
実際に持っていなくても売ることができるため、値下がりでも利益を狙えることができます!つまり空売りです。ハゲタカファンドが得意なやつです。
③幅広い対象
株式、株価指数(日経225など)、原油、金、仮想通貨などを扱うことができるため、自分の得意な分野で戦うことができます!

この取引のメリットとして値上がり・値下がり両方で利益のチャンスができることが挙げられます!加えて満期がない、つまり好きなタイミングで決済可能ということもメリットですね。

一方で、注意点 としてレバレッジのリスクが挙げられます。値動きが大きいと損失も大きくなるんですね。古のネットユーザーはFXで有り金とかした顔、というと分かりやすいでしょうか……

一見、とてもうまい話に見えますが、もちろんデメリットや知っておかなければならないこともあります。その中でも特に注意してほしいことが、これらは手数料がかかるということです!その中でも代表的なものがこちらです。

オーバーナイト金利やスプレッドとは?

まずは、オーバーナイト金利について

CFD取引ではレバレッジによって、元手資金より多くの金額で投資することができたり、そもそも現物を持たずに取引をしています。これは、証券会社にお金を借りているという状態になるわけです。そのため、レンタル料がかかってくるわけですね。面白いのが、買いを選択した方のみ手数料の支払いをする必要があり、売りポジションでは逆に手数料を受け取ることができるわけです。

一方でスプレッド(売買価格の差)はいわば手数料です。買い価格と売り価格に少し差(スプレッド)があります。この差がブローカーの手数料のようなものです。

もちろん、他にも様々な手数料があるのですが、今回はこれの手数料の話を書きました!もし興味を持たれた方は、IG証券の公式サイトを見てみてくださいね。

では改めてIG証券の特徴って?

IG証券の売りはこのすさまじい数の取り扱い銘柄です!

なんとCFDは12,000!例えば人気の楽天証券では指数CFDと商品CFDとバラエティCFDを含め合計100銘柄、SBIならば店頭CFDは合計130銘柄以上です。しかし言い換えれば、後者ネット証券二社は初心者にもやさしく、わかりやすい銘柄がそろう一方で、IG証券は完全に玄人向けの証券会社にも見えますね。

加えてIG証券のスプレッドは業界最狭水準の狭さでもあります。

たとえば、こちらが楽天証券の公式サイトで確認できる楽天FXのスプレッド・証拠金・スワップポイントです。

2025年5月の時点で一番上のドル円のスプレッドは0.2と、なかなかの低さです。

ちなみにこれがGMOクリック証券のスプレッドです。

2025年5月の時点で一番上のドル円のスプレッドは時間帯次第で0.2と、楽天と競り合っている様子がわかりますね。

では、こちらがIG証券の公式サイトで確認できるIG証券のスプレッドです。

2025年5月の時点で一番上のドル円のスプレッドは0.05と、なかなかの低さです。バグかなんかか?

と、ここまで見てきましたが、すさまじいとがり具合でしたね。

ではこの企業が今どのような状態なのか、軽く見ていきましょう!

今はどんな状態なの?

さて、企業が今どんな状態か知るためには「統合報告書」や「有価証券報告書」、英語で言えばAnnual Reportなどがありますが、実は、四半期報告書などのように一年を四回に区切って出してみるものもあります!

24年の分析をしてみる前に、一足先に25年の成績を見てみましょう!

さて、これを見てみると、総収益は2億6,800万ポンドで、前年同期比12%増、前四半期比10%増となったようです。このうち、トレーディング収益は2億3,530万ポンドで、前年同期比15%増、前四半期比 12%増。市場環境の好転に伴う顧客1人当たり収益の増加が成長を牽引したようです。

トレーディング収益というのは証券会社の自己売買の利益のことです。これは手数料で多くを稼いでいるわけではないことを示しています。例えば、お客さんから十万円で株を買うように言われたとすれば、株式市場でそれより安く買うことができれば、その利ザヤで稼げます。その手間賃として手数料を取ることもありますが、IGグループのこれを見る限りトレーディング業務のほうが大きそうなことがわかります。また、自身もプレイヤーとして参加すれば、さらに手数料に依存しないビジネスモデルの構築ができますね。

企業分析をしてみよう

世界を股にかけ名古屋のIGアリーナのネーミングライツを買ったIGグループ。名古屋の企業じゃないとはいえ、新しいアリーナの名前を購入したわけですから、気にならないわけがありませんね。お財布はどのような状態なのでしょうか。そこで必要になるのが「統合報告書」や「有価証券報告書」です!第一回で細かく説明したので、今回は簡単に見ていきます。(B/Sやキャッシュフローの詳細な説明が見たい方は、ぜひ第一回目の【瀬戸市】医療分野で世界中の人々を笑顔に — ガイドワイヤーシェア世界No,1のナゴヤ企業「朝日インテック株式会社」をご紹介!をご覧ください)

有価証券報告書は主に様々な企業情報が記載された、いわば「株式会社の健康診断書」になるものです。これらから、今のIGグループの姿を見ていきましょう!ちなみにここでは2024年統合報告書を用います。いつもと趣向が少し変わることをご容赦ください。

「貸借対照表(バランスシート)」を見る

まず、バランスシートを見ていきましょう。別名、貸借対照表(Balance Sheet: B/S)といい、会社がどれだけ財産を持っているかが分かります。項目は資産の部と負債の部に分かれています。

IGグループの純資産がいくらになるかというと、 1,889.5百万ポンドです。自己資本利益率(ROE)で言えば19.85%ということになりますね。

さて、ここで比較などをできればいいのですが実はこうした金融機関の比較はとっても難しいです。何より日本は不良債権処理で苦しめられてきた歴史があるためか、自己資本比率は強固な規制があります。

日本では、金融商品取引法では、自己資本規制比率の120%維持義務が規定されており、それを下回った場合、金融庁はその証券会社に対して監督命令を発することができることとなっています。

https://www.jpx.co.jp/rules-participants/participants/ratio/index.html

そのためここではあくまで参考程度にイギリスの金融系企業と比較してみましょう。

イギリスのTP ICAP Group PLCは、平均自己資本利益率(過去12カ月)8.13。Ashmore Group PLCは平均自己資本利益率(過去12カ月)は8.62でした。

「損益計算書」を見る

次は損益計算書を見ていきましょう。損益計算書(Income Statement)とは、会社がいくら稼いで、そのためにどうお金を使ったかを記述し、最終的にいくら儲かったのかを明らかにします。

IGグループの2024年統合報告書からのもので、2023年と2024年(5月31日締め)の財務実績を示す損益計算書です。単位:£m = 百万ポンドなので、ご注意ください!(三敗)

つまり、

①収益の減少:取引収益が減少(949.7→852.4)したことで、純営業収入が前年比で減少。市場環境や取引量の低下が影響した可能性があります。
②利息収入の増加:顧客資金に対する利息収入が大きく増加(81.8→145.7)。金利上昇が背景にあると考えられますが、日経新聞で知べてみると2024年4月に英イングランド銀行(中央銀行)が利上げを終了した、というニュースがあるため、米国など他国の中央銀行の関係でしょうか……。総収益は前年比3%減でしたが、これはトレーディング収益の減少が受取利息の増加によってほぼ相殺されたためである。

③費用の増加:営業コスト(583.8→604.1)や金融費用(16.2→24.8)が上昇し、利益を圧迫。
④利益の減少:税引前利益(449.9→400.8)および親会社株主に帰属する利益(365.0→307.7)が減少。1株当たり利益も低下。
⑤非継続事業:2023年にあった非継続事業からの利益(1.3)が2024年にはゼロに。
全体的に、IGグループは2024年に収益減少と費用増加により利益が縮小したものの、利息収入の増加が一部支えとなっているようですね!

「キャッシュフロー計算書」を見る

キャッシュフロー計算書は、現金の出入りについて記録したものになります。お店でいえば通帳のようなものです。このキャッシュフロー計算書には3つ種類があり、それぞれ営業、投資、財務という3つでお金の動きを見ることになります。

営業キャッシュフロー(Operating Activities):日常業務から得られる現金。例えば、レンタル料金の収入、在庫の購入による支出が含まれます。

投資キャッシュフロー(Investing Activities):設備投資や不動産購入、もしくはそれらの売却によるキャッシュの動き。例えば、新しいレジシステムや新規のビデオ購入、販促用ロボットの導入コストなどです。

財務キャッシュフロー(Financing Activities):借入金の返済、株主への配当、資本増資など。例えば、銀行からのローンを返済する際の出金などがあげられます。

のようになります。

例えばここからわかることを分析してみましょう!

今回のIGグループさんは24年度の分を見ていきましょう。

まず、23年の期末残高は795.2でした。ここから営業活動によるキャッシュ・フローで397.0稼ぎ、投資活動によるキャッシュ・フロでは194.4稼ぎます。しかし、財務活動によるキャッシュ・フロでは(466.3)……つまり-466.3となってしまいましたね。しかし結果的に、現金及び現金同等物の期末残高は増加なので問題はなさそうです。

本来は様々な分析をしていく必要がありますが、今回は前編後編の前編ということでご容赦くださいませ。

それでは、短いですがここまでご覧いただきましてありがとうございます。後編をお楽しみに!

ABOUT ME
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隼河ジョン
2002年生まれ。一時期は企業を擬人化して脳内で同人誌を書いていた異常証券マン。企業や経済活動を擬人化してニヤニヤしているとは言えず、適当に言い訳しつつ情報収集をしている。名古屋圏に数多くある製造業や、新しい企業を知ることで、皆様の知らないナゴヤをお伝えできるよう奮闘中。