伝説の超ナゴヤ人に訊く

伝説の超ナゴヤ人に訊く【名東区一社】地元に愛される正統派洋食店『kitchenNOMU』オーナーシェフ 野村典弘さん

地元の住み心地は、地元の主に訊くのが一番!穏やかな心を持ちながら、激しい地元愛によって目覚めた名古屋最強の伝承者。それが〝超ナゴヤ人〟だ!『伝説の超ナゴヤ人に訊く』第5回は【名東区一社】です。

『kitchenNOMU』オーナーシェフ 野村典弘さん

あなたの町に、お気に入りの洋食店はありますか?

名東区は戦後再開発が進んだ街で、市内でも比較的新しい住宅街。市内中心部まで乗り換えなしでアクセスできる地下鉄東山線沿線にある人気のベッドタウンです。

「一社駅」は、そんな名東区の玄関口とも言うべき駅。

今回は、そんな一社駅で人気の洋食店『kitchenNOMU』を営む野村典弘さんにお話を伺いました。

▲一社駅の南側、西一社中央公園のそばにある小さな洋食店


某グルメサイトの「洋食 百名店 2022」選出店でもある『kitchenNOMU』。

威厳のある厳しそうなシェフを想像していたら…
ドキドキしながら取材依頼の電話をかけたら、物腰柔らかでめっちゃ優しそうな方。

取材にも笑顔で快く応対していただきました。

フレンチから洋食へ。一社の街で20年以上。

ー『kitchenNOMU』を開店される前は、どちらで修行されていたのですか?

最初はフレンチのお店で10年働いていました。

その後、気軽に入れる洋食というものに惹かれて、打越の交差点の近く(一社駅の北側)にあった『洋食 煉瓦屋』でも10年。

一社では20年以上になります。

『煉瓦屋』は一社の街で25年以上愛されてきた店。
ですが、オーナーが体調を崩して店を畳むことになってしまったんです。

誰かがこの味を継がないと勿体無いな…と考えた時、
「自分がこの街の人に愛されている味を残したい」と思いました。

地元のお客さんにとっては「街の洋食屋」が急になくなるということは寂しいことだと思ったんです。

それで、『煉瓦屋』の味を引き継ぐ形でこの店をオープンしたのが2011年。

震災の年ですね。

▲フレンチで10年、その後一社の洋食店『煉瓦屋』で10年。『kitchenNOMU』は今年創業11年になる。

王道の洋食

ー『煉瓦屋』の前にはフレンチのお店で働いておられたということですが、洋食の魅力はどういうところですか。

洋食の中には、実はフレンチの技術がたくさん使われています。
ただ、個人的にはワンプレートというか、定食という形で完結する料理の方が性に合ってると思いました。

記念日に行くような高級店じゃなくても、きちんと修行したシェフの技術にもっと身近に触れてほしい。

街の人が「たまには美味しいもの食べたいな」という時に、気軽に入れるのが洋食店の魅力です。

真面目な味をお手軽に

ーこだわりやポリシーがあれば教えてください。

「真面目な味をお手軽に」と思っています。
この街に住む人に気軽に来てもらいたいから、格式高くしたいとは思わない。

高級食材を使えば豪華な料理はできますが、それなりの値段で買える材料で、一番いい状態で出すのが「街の洋食」だと思っています。

ハンバーグやフライは家庭でも作ることができますよね。
ある程度のこだわりはありますが、僕はべらぼうに高い材料は使いません。
高い食材や珍しい食材を使えば、誰でもそれなりに美味しくなりますからね(笑)

ありふれた材料で作っても、フレンチや洋食のちゃんとした技術を使って提供することで、やっぱり家庭ではできない「ちょっと特別な料理」になる。

そういう料理を、これからもやっていきたいですね。

▲「真面目な味をお手軽に」が「ちょっと特別な」家族団欒の場所になる。

ー2号店の構想などはありますか?

今は全然考えてません(笑)

ちゃんとしたものを自分の手で作りたいという気持ちが強いので。
目の前のことを大切に1つ1つこなしていきたいですね。

ハンバーグ

看板商品のメインはハンバーグです。

うちのハンバーグはお肉にはあまり味をつけていなくて、ソースも薄味なんですよ。
お肉の味そのものを味わってほしいと思っています。

あと、他では珍しいポイントかもしれませんが、うちではハンバーグの表面にパン粉をつけて焼いています。
次にラードで表面だけを焼きます。ラードで焼くと、コクやパリッと感が出るんですよね。
表面を焼いたら、あとはオーブンへ。

そうすることで、肉汁がしっかりとハンバーグの中に閉じ込められます。
ナイフを入れた時にジュワッと出てくる状態に仕上がるんです。

▲ナイフを入れると溢れ出す肉汁!

シチュー

シチューは、実は一番時間がかかる料理なんです(笑)

ルーを作るところから、1週間以上かけて100人前を作ります。

なるべく出来合いのものは使わずに、素材から出る旨味や甘みを活かしています。
だからこそ季節によって多少味が変わることもありますよ。

フライ

フライやカツは、基本的に余熱で火を通します。
ミディアムやレアで揚げ、お客様のテーブルに出る時に絶妙な火の通り加減になるように調整しています。

フライのポイントは、パン粉専門店から仕入れる生パン粉ですね。
これはハンバーグの表面にも使っています。
パン粉専門店なので、パンは売ってないんですよ。
食感が全然違うので、自家製ではなくあえて「専門店のパン粉」にこだわっています。

あとは、フライに添えるタルタルソースは、マヨネーズから全て一から手作りで作っています。

▲こだわりの「パン粉専門店」のパン粉。

一社の印象

ー一社という街の印象を聞かせてください。

綺麗な街並みで、住みたい街の候補となる駅

住んでいるところは市内の別の駅なのですが、とても住みやすそうという印象です。

『煉瓦屋』と『kitchenNOMU』を合わせると、20年以上この町で働いています。
だからとても愛着がありますね。
交通の便はすごくいいし、駅前もある程度賑やか。
でもちょっと大通りから奥に入ると、すごく綺麗な街並みですよね。

子供の転校とかがなかったら、候補に入れたと思います(笑)

▲20年以上この街で働く野村さん太鼓判の「穏やかで住みやすい街」

ー地元の方に愛されているお店だと思いますが、どのようなお客さんが多いですか?

すごく幅広いと思いますね。

若い方も年配の方も、ファミリーも、カップルもいらっしゃいます。
この辺りは転勤族も多いので、新しいお客さんも定期的に来てくれますね。
逆に、戦後開発される前から住んでいるような方もいますよ。

地域性としては、本山や星ヶ丘のようなおしゃれなお店が集まる街ではないと思います。
もっと真面目な印象です。

見た目の派手さやおしゃれさよりも「質実剛健」というか…
真面目にやってる「王道」のお店の方が受け入れられているんじゃないでしょうか。

僕がもともとやっていたフレンチは、記念日に行くような高級レストランが多い。

逆に、地元の洋食店というのは、毎日の暮らしの中にあります。
なんでもない日にもファミレスではなく「ちゃんとしたものを食べたい」という方に、「丁寧な洋食」として受け入れられている気がします。

だからこそ、「気取った店」よりも、「気軽に入れる店」であることが大事だなぁと思っています。

▲清潔な店内は4人テーブルが4卓・2人テーブルが2卓・カウンターが6席。小さな洋食店はいつも予約でいっぱい。

家族との時間

ーご家族とは、普段どのように過ごされていますか?

僕は今年52になるんですけど、結婚したのが遅かったので下の子がまだ3歳なんです。
夜も営業しているので、帰ったら当然子供たちはみんな寝てます。
子供たちとの時間は毎日朝の1時間ぐらいになりますが、とても大事にしてます。

お店にはファミリーのお客さんが来てくださることも多い。
だから、休日にはなるべく家族との時間を大切にしようという気持ちになりますね。

公園に行くにしても、外食するにしても、ご飯を作る時もみんなで作ります。
洋食の技術を使ってやることもできるんですけどね…
うちの奥さんには健康を考えて「薄味にしてくれ」と言われてるので、素直に従ってます(笑)

そこはもう一つの「我が家の」ダイニング

11月某日、プライベートでちょっと落ち込むことがあり、美味しいものを食べて元気を出したい気分だったこの日。

家族で『kitchenNOMU』に赴き、ディナーをいただきました。

▲優しい照明に入店前から癒される
こだわりパン粉&余熱調理のフライ料理

無類の甲殻類好き&エビフライ好きの私は、「カニクリームコロッケ&車エビのフライ」をチョイス。
余熱で火を通したエビフライは絶妙なプリプリ加減で感動しました!

▲「車海老のフライとカニクリームコロッケ」。

手作りのタルタルソース…これだけでご飯3杯いける気がする。
カニクリームコロッケは、もったりしたベシャメルソースにカニの存在感がしっかり!
付け合わせのサラダもさっぱり。

絶品ハンバーグ

夫は「ハンバーグ&カニクリームコロッケ」をセレクト。

▲「ハンバーグ&カニクリームコロッケ」

「ねぇねぇ、一口ちょうだい」とお願いしてみました。
普段は快くシェアしてくれるのに、ものすごい嫌な顔をされましたw

ハンバーグへの夫のコメント「肉汁やばい」「肉の味やばい」「肉やばい」
語彙力どうよ・・・

懇願して1口だけ頂いた私のコメント「やばい」(だから語彙力!)

表面はパリッとしていて、中から溢れ出る肉汁。
デミグラスソースは思ったよりもずっとあっさりしていて、肉汁と混ざって良い感じに。
そこにご飯をほおばると、思わず顔がほころびます。

息子(小5)が選んだのは「ハンバーグ&ホタテフライ」。

▲「ハンバーグ&ホタテフライ」。いつもはおしゃべりを注意される息子が黙々と完食!

息子にも「1口だけちょうだい」と言ってみましたが、完全に無視されましたw
どちらかといえば痩せ型の男子ですが、しっかり大人一人前をペロリ。

ホタテフライをハフハフ頬張り、ハンバーグを食べて「ほっぺた落ちる〜!」

付け合わせの野菜も残さず綺麗に食べました。

こだわりのルーがお手軽に堪能できるハヤシライス

娘(中3)のチョイスは「ハヤシライス」。

▲ハヤシライスはお肉がゴロゴロ!

別盛のライスと、サラダ付き。偏食に悩まされる娘が
「めちゃくちゃ美味しい」「玉ねぎ最高」「お肉最高」と感動を連呼していました。

味見させてもらったら、甘さとコクが口いっぱいに広がる贅沢なルーに幸せいっぱいに。

その他にも美味しそうなメニューがたくさん。気になる・・・

▲価格も1000円台〜とお手軽に立ち寄れるお店

「美味しかったね。」

「また行きたいね。」
「今度はビーフカツ食べたい。」
「あれは気になるね」
「俺は絶対ビーフシチュー。」
「やっぱメンチカツでしょ。」
「ねぇ、次いつ行く?」

帰りの車の中の会話は、次に食べたいもメニューの話題で持ちきり。

そういえば何で落ち込んでいたのか、帰宅する頃にはすっかり忘れていました。

編集後記

ちょっといいことがあったとき。

美味しいものを食べて元気を出したいとき。

がんばった自分を褒めたいとき。

家族とゆっくりくつろぎたいとき。

特別な記念日じゃなくても、「ちょっといいもの食べたいな」という日があります。

『kitchenNOMU』の正統派の洋食は、その期待を裏切りません。

素材を活かした正統派の洋食は、この街に暮らすたくさんの家族の思い出の味になっているはず。

タルタルソースをたっぷりつけたサクサクプリプリのエビフライを口いっぱいに頬張りながら、
「いいことがあったら、また来よう」と思いました。

kitchenNOMU 店舗概要

住所:名古屋市名東区一社2-77
TEL:052-703-8989
営業時間:11:30~14:00(ランチ)17:30~21:00(ディナー)
定休日:月曜・火曜
カード・電子マネー使用不可

ABOUT ME
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veronica
名古屋在住の不動産ライター。方向音痴の宅建士。大学卒業後不動産仲介営業を経験し、結婚で名古屋に転居。現在はポータルサイトで不動産コラムの執筆や企画などを中心に活動中。自称和装が似合うマダム。高校生と小学生のママで、星野源が好きです。