伝説の超ナゴヤ人に訊く

伝説の超ナゴヤ人に訊く【昭和区川名】理想は〝帰省した時に行きたくなる店〟『比呂野』廣野耕史さん

「比呂野」店長の廣野耕史さん

地元の住み心地は、地元の主に訊くのが一番!穏やかな心を持ちながら、激しい地元愛によって目覚めた名古屋最強の伝承者。それが〝超ナゴヤ人〟だ!『伝説の超ナゴヤ人に訊く』栄えある創刊第1回は【昭和区川名】です。

今回お話を伺ったのは、川名エリアを代表する飲食店『比呂野』の代表、廣野耕史さん。

山花町の大通り沿いに「珈琲家」「とんかつ家」「うなぎ家」「きしめん家天むす」の名古屋めし4店舗(!?)を経営しながら、自ら厨房に立ちメニューの開発も行う敏腕社長と聞けば、一体どんな方なのかとお会いする前から緊張しっぱなし、おまけに地元だからと言って、うっかりダメージ過ぎるジーンズとサンダルで取材に来てしまった素人感満載の私に、店で「大将」と呼ばれる廣野さんは、お店の歴史から優しく語って下さいました…(涙)

昭和52年創業。はじまりは珈琲家でした。

川名エリアの住民にとって、地元でおすすめの飲食店としてまず一番初めに思い浮かぶのが『とんかつ家比呂野』です。

当エリア在住15年の私もイチオシのお店。

とんかつ全体に味噌がかかった名古屋定番の味噌カツも良いですが、私は味噌が別添えの比呂野スタイルがお気に入り。

ランチは1,000円からとリーズナブルで、子育て真っ最中の私もママ友とのランチ、特別な日のごはん、どうしても夕飯作りをサボりたい日のテイクアウトや出前、何度となくお世話になっています。

山盛りキャベツとちょっと辛みの効いたドレッシングで胃腸の準備体操を終えたら、サクサクのロースカツを甘辛い味噌ダレにつけて口いっぱいに頬張ります。

追いかけるように白ご飯を頬張り、思わず家族と目を合わせて顔がほころぶ。

「やっぱり比呂野だねぇ」

そんな家族の思い出と共にある比呂野の魅力は、昭和52年の創業以来変わらない美味しさのとんかつと味噌ダレ。

おしゃれなお店や話題のお店があるのも素敵だけれど、地元に老舗のとんかつ店があるというのは、実はちょっとした自慢です。

とんかつで有名な比呂野のストーリーは、先代のオーナーがオープンした隣接する喫茶店『珈琲家比呂野』から始まっていました。

自宅を改装して始めた喫茶店と、その後オープンしたとんかつ家を経営していた先代は、後に2代目となる廣野さんが22歳の時に急逝されたそうです。

とんかつ家比呂野のランチ▲ひれかつランチは1,150円
とんかつ屋比呂野 外観▲先代がオープンしたとんかつ家は街のシンボル的存在

22歳で受け継いだ『比呂野』の暖簾への思い

――『比呂野』の暖簾を受け継がれた時の心境を聞かせてください。

僕は生まれた時からこの町で育ってきて、今来てくれるお客さんも小さい頃から顔見知りの方ばっかりなんです。

親父は料理ができなくて、厨房には入れない人だったんですよ。だから厨房は人を雇って経営してました。でも、僕は「もし跡を継ぐなら、二代目のお前は料理できるようになれよ」って言われて育ったんです。親父が経営していく中で課題に感じてた部分なのかもしれないですね。

それで、高校卒業後は神戸の料理専門学校に行ってました。神戸にしたのは、1回名古屋から離れて一人暮らしがしてみたかったので(笑)

23歳で親父が他界して、それで実家に戻ることになったんですが、実はその頃の店の経営は大変だったんです。継いでから2〜3年間は、記憶にないくらいがむしゃらにやりましたね。とにかく売り上げを上げないといけないと思って、経営のやり方を工夫していろいろ変えました。

たとえば、とんかつの揚げ方や肉の熟成は微妙に変化させているけど、とんかつの味、油の鮮度に対するこだわり、味噌の味は創業当時から変わっていません。とんかつの味を活かすために、上から味噌をかける昔ながらの味噌カツだったのを、味噌を別添えにしてソースや岩塩も使えるようにしたのは僕の代からです。細かいところでは、掃除や接客のやり方、キャベツの切り方まで自分が「これだ」と思うやり方に変えました。

いろいろやり方を変えていく中で、当時のスタッフからはめちゃくちゃ反発されたし、全然ついてきてくれなかった。でもそれがやっと数字に乗ってきたら、給料も上がる、ボーナスも増えるっていうのがスタッフにも伝わって、やっと周りからも認めてもらえて、信頼を得るまでには2年はかかりました。

長年同じ場所で商売やっていると、僕が小さい頃からお世話になってるお客さんはどんどん亡くなっていくんですよ。悲しいけど。でも、その人のお子さんとかお孫さんが今の常連さんになってくれているんです。自分が頑張ってきただけじゃなくて、スタッフや地元のお客さんに支えられてるんだなというのをひしひしと感じてます。

今は県外から来てくれたりするお客さんもいてもちろん嬉しいんですけど、やっぱり地元のお客さんに愛される店でありたいですね。

最近引っ越して来た若い夫婦のお子さんとか、この町で育った子供が、30歳40歳になって帰省やらで地元に帰って来た時に「比呂野に行こうか」と思ってもらいたいし、そんな風にうちの店を使ってもらうのが僕の一番の理想なんです。

店内 お座敷
店内 カウンター▲レトロな落ち着きと普段使いの気軽さが心地良い店内

名古屋めしの多角経営と今後の展開

――『比呂野』さんは喫茶ととんかつの他にも、うなぎ・きしめん・天むすといった名古屋めしで多角経営をされていますよね。

実は名古屋めしにこだわってるわけじゃないんですよ(笑)でも、たまたまそうなってますね。うなぎ家は2010年にオープンしたんですが、僕が個人的に大好きなので、ずっとやってみたかったんです。

でも、オープンしてからうなぎの原価がどんどん値上がりしていって…3倍になったんですよ。他のお店がどんどん値上げしていく中で、やっぱり地元の人に気軽に食べに来て欲しいという思いが強かったので、値上げしたのはうちの店が最後でしたね。

色んな店をやってますが、うちは1店舗ごとに専門店なんです。同じ店であれもこれもやるよりも、専門店でやることによって、材料や工程にもしっかりこだわることができる。それが地元の人たちに受け入れてもらってるのかなと思ってます。

きしめん家を始めたのは、元々うどん屋さんがあった店が空いたことがきっかけなんです。喫茶ととんかつはずっとやっていたけど、新しく始めたうなぎ家は原価が上がったことで単価が高くなってしまった。そのタイミングで、元々うどん屋さんだったお店をたたまれることになったんです。地元の麺どころがなくなってしまうのは寂しいし、無くしたくないなという思いが生まれたんですよ。

あとは、実は名古屋にはきしめんの専門店は少なくて、駅とか神社とか、シチュエーションで美味しいと感じるだけじゃないか?と前々から思っていて、一度出汁からしっかりこだわってやってみたいと思いました。

この日は暑かったので、編集長はとんかつのせ、私はかき揚げを追加して冷たいコロきしめんをいただきました。

鰹と薄口醤油をベースにした出汁と、もちもち食感でしっかりコシもあるきしめんは絶品!かき揚げはボリュームがありながら口当たりはしつこくなく、油の鮮度にこだわった比呂野ならではの一品でした。

きしめん屋天むす比呂野 外観▲『きしめん家天むす比呂野』は、珈琲家・とんかつ家・うなぎ家に継ぐ4店舗目
コロきしめん▲冷たいコロきしめんは天むす1個付き
かき揚げ▲サクサクのかき揚げ。塩ときしめんのつゆでいただきました
おろしとんかつのせコロきしめん▲おろしとんかつのせコロきしめん。ボリュームたっぷりで満腹!

――今後の出店についての展望はありますか?

僕はやると決めたら、全部一人で考えて決めるんですよ。頭の中にはいろいろと計画はあるんですけど、やっぱりこの「川名」っていう地元にこだわってやっていきたいっていう思いが強いんです。

だから物件とか、タイミング次第ですかね(笑)いくつか頭の中に引き出しは持っていますが、あくまでご縁に合わせてやっていこうかなと思っています。

――「川名」という街について、どういう思いがありますか?

この10年くらいで新築の家とかマンションが増えてすごく人口が増えましたね。うちの喫茶店に来てくれるお客さんは昔ながらのお客さんばかりですが、道端で会っても声を掛け合うような昔ながらのコミュニケーションがあって。すごく住みやすいし、治安も良いです。あと、公園も多いし、学校の教育も良い噂しか聞かないので、子育てするなら最高だわと思いますね。

この通りは下町の雰囲気もあるけど、一歩奥に入ったらすごく綺麗な家も多いですよね。だけど近所にあるのは高級スーパーじゃないし、地に足がついてるというか、暮らしやすい。
難点といえば、結構坂道が多いんで、自転車に乗る人にはきついかな?今は電動があるけどね(笑)

――「川名エリア」でお気に入りのスポットを3つ教えてください!

1つ目は、「川名公園」ですね。開放的でめちゃくちゃ雰囲気が良いし、広さもちょうど良いし、僕も家族連れでよく行きます。川名公園ができてから、昭和区のこの辺の価値というか、住みやすさがグッとレベル上がった気がしますよ。

2つ目は、スーパー「八百鮮」です。あの店は社長さんが僕と同世代の人だそうです。いろいろと工夫して頑張ってらっしゃるなと思うし、地元のヒーローだなと思ってますよ。野菜も果物も新鮮だし、鮮魚も美味い。前のタチヤも人気だったけど、野菜のロットが小さくなって普通のファミリーでも使いやすくなったので、この辺に引っ越してきた人には是非おすすめしたいですね。

3つ目は、「川原神社」かな。今は女性の宮司さんなんですよ。有名な観光地でもないし、何がどう良いかは具体的に言葉にできないんだけど、街中にありながら緑があって、静かで、地味に良い(笑)僕にとってはパワースポットです。

お話をお聞きして、この街の一番の魅力は背伸びしすぎない地に足のついた暮らしやすさかも知れないと感じました。

第一種低層地域の戸建が立ち並ぶ高級住宅街かと思えば、駅まで下って行けばリーズナブルな店も多く、下町風情も存分に楽しめる…そんな気取らず無理せず等身大の暮らしがしたいバランス重視のあなたにとって、「川名」は無理なく穏やかに生きられる街かも知れません。

比呂野 店舗概要

・とんかつ家比呂野
愛知県名古屋市昭和区山花町116番地
TEL 052-763-2643

・うなぎ家比呂野
愛知県名古屋市昭和区山花町119番地-1
TEL 052-763-2007

・きしめん家天むす比呂野
愛知県名古屋市昭和区山花町119番地-1
TEL 052-763-5200

・珈琲家比呂野
愛知県名古屋市昭和区山花町116番地
TEL 052-751-2612

取材・文・撮影:Veronica/取材・編集:ouki

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veronica
名古屋在住の不動産ライター。方向音痴の宅建士。大学卒業後不動産仲介営業を経験し、結婚で名古屋に転居。現在はポータルサイトで不動産コラムの執筆や企画などを中心に活動中。自称和装が似合うマダム。中学生と小学生のママで、星野源が好きです。